NEW ORLEANS 2018/12/23
武田龍之介の推薦盤 Vol.3
『Dr. John / Dr. John Plays Mac Rebennack』
01. Dorothy
02. Mac’s Boogie
03. Memories Of Professor Longhair
04. The Nearness Of You
05. Delicado
06. Silent Night
07. Dance A La Negres
08. Wade In The Water
09. Honey Dripper
10. Big Mac
11. New Island Midnight
12. Saints
13. Pinetop
今から約30年前、私の脳に雷が走ったのは、今はなき吉野屋が並びに位置するお茶の水のディスクユニオンでの事でした。それは、人生のターニングポイントとなりました。子供の頃から、クラシックピアノを習わさせられてたくちなのですが、当時の私は、なんとなく、楽譜を買って(耳コピなどの技術はなし)、ラグタイムピアノやスゥイングジャズ、ブルースなどを弾きながら、いまいち、しっくりこず、ピアノという楽器に対してもあきらめというか、情熱を感じられず、ルーツロックばかり聴いていた時期でありました。
いつものように、レコード棚を何とも言えぬあの香(輸入盤臭)を満喫しながら、お宝探しをしていると、ソロピアノが店内で響いておりました。次の瞬間、手が止まり、鳥肌が立ち、硬直している自分がおりました。何とも言えぬグルーブ感、ブルースなのに暗いジメジメした感がなく、心地よく転がるようなピアノフレーズ、アメリカ南部を感じさせる哀愁・・・。初体感のサウンドとともに、こんなピアノが弾けるピアニストになりたい。ミュージシャンとして生きていきたいと心に決めた瞬間でした。
すぐに、レジに行き、今、流れているのは、誰?Dr. John です!それ、ください!!!
その日からです。ニューオーリンズピアノということを知り、ニューオリンズファンク、セカンドラインの沼にはまっていくのでした。当時、この作品、日本盤はアメリカーナというレーベルからリリースされており、そのレーベルは江戸川区の西葛西の一軒家にありました!ニューオーリンズ〜カントリー系のサウンドが充実しておりました。嬉しくなって、CD屋ではなく、直に伺って、色々と、CDを購入させていただきました。だって、私、西葛西中学なんです。
本作、タメのきいた左手のベースラインがずっしり重みを感じさせ、そして、コロコロ転がる右手のピアノが躍っているのです。このコラボレーションによるグルーブ感は、いわゆるのブギウギピアニストやブルースピアニストとも違うのです。これは、Dr.Johnが、もともとギタリストだったことに起因していると思うのです。ピアニストのそれとは、何か違うものを感じるのです。その魔法に私は、かかってしまったのだ。そして、渋みのあるヴォーカル(Tr.④⑥)。よくありがちな、チープなカクテルソロピアノ作品集に陥らず、ニューオーリンズの伝統を継承した、アーシーなロックアルバムといっても良いだろうと言い切らせていただきます。
①Drothyの温かみのあるブルージーなワルツで私は、恍惚な人となる。④ホーギー・カーマイケルによるスタンダードのThe Nearness Of You。⑥Silent Nightはあの有名なクリスマスソングである。⑫Saintsは聖者の行進。ブルース、ブギウギやニューオーリンズピアノの創始者 Professor Longhairへの敬愛、20世紀初期、フレンチクォーターの時代のニューオリンズの独特の場末感と妖艶な雰囲気まで、まったく古さ、懐メロ感を感じさせないDr.Johnの世界が凝縮されたピアノソロ作品なのである。
ちなみに、現状、取り扱われている同商品は『The Legendary Session Volume One』ということで、以下のボーナストラック4曲が追加されております。これまた必聴の価値あり。
14. Careless Love
15. Deep Blue
16. Ti-Na-Na
17. Dorothy(Take2)
そして最後に、この歳になってもまだ夢を捨てないで、Dr.Johnになりたいと本気で思っているのである。